健診に関する考え

従来の健康診断は異常があるかどうか、あるいは数値が基準内に収まっているかどうかということのみを見ていたのではないでしょうか。病気あるいは異常の発見に重点が置かれていたわけです。しかし生活習慣病が社会問題化している昨今、病気の発見や基準値にとらわれた「数値」のみを見るのではなく、その結果から現在の健康状態を知り、将来的な健康リスクを推測することが重要とされるようになってきました。さらに現在の健康状態を如何にして「増進」するかということを考えるきっかけとすることも、健康診断の大きな目的となっています。すでに日本では行政サイドでは健康診断の意味や目的がこのように変わってきていますが、労働安全衛生法で定められた健康診断では、漫然と義務のように受診されているのが実態であるように思います。

  

香港では日本の法令で規定されているような「健康診断実施の義務」はありませんが、多くの日系企業の場合、少なくとも日本で採用して香港に駐在させている社員に対しては、日本国内の労働法に準拠して健康診断を実施しています。海外では帯同家族もその対象としていることが多いようです。また香港で日本人によって設立された事業所においても同様に毎年の健康診断を実施しているところは少なくはなく、日本人にとって年に一度の健康診断は、香港でも非常に馴染み深いものとなっていることは確かでしょう。

  

ところで、せっかく多額の経費をかけて健康診断を受診するわけです。しかも痛い思いをして採血されたり、X線を浴びたりするわけであり、受診者にはそれなりの負担が強いられます。忙しい中、時間も工面しなければいけません。受診したからにはそれなりの意味があるものであって欲しいと思います。単に義務として受診して、そのまま受けっぱなしになってはあまりにももったいないことです。そこで弊社では受診者の方に、検査結果についてより良く理解していただけるように、従来の紋切り型の医師コメントだけではなく、たとえ1行だけであったとしても別に解説を加えて、より判りやすいものにするようにしています。健康診断結果を受け取った方の検査結果への理解が少しでも深まれば、そのメリットは確実に大きくなるものと確信しています。すべての数値が基準値内なので問題がないと片付けてしまうことは、できる限り避けたいと思っています。

  

現在、40歳以上の日本人の4人に一人は糖尿病あるいはその予備軍であるといわれています。予備軍とは空腹時血糖値が111mg/dl以上の場合であり、どこで健康診断を受けても再検査の指示や食生活に注意することを求めるアドバイスもされないのが現状です。血糖値がかろうじて基準値を満たす109mg/dlであった場合、受診者に対して何のコメントもなされないのが現状です。血糖値が高めであるということを知る術はありません。これが実は健康診断における最大の問題ではないかと弊社では考えています。109mg/dlであっても糖尿病予備軍に入る111mg/dlであっても、その血糖値の医学的意味合いに何の変わりもありません。しかしこういった境界にある人に対しても注意を促すことが大切で、これによって血糖値が高くなりつつあることに早く気が付いて、将来の糖尿病発症リスクを低くすることが可能であるはずです。できる限り早く対処することで本人の生活改善への負担も軽減することでしょう。反対に基準値を少しくらい上回っても問題が少ないコレステロールなどは、受診者の無用な心配などを軽減してあげることも必要と考えます。基準値は大切ですが、それにとらわれていると大切な本質を見逃してしまい、健診の意味が半減してしまいます。

  

何がお客様にとって最大の利益になるのか?常にこの問いかけに対する答えを模索しつつ、日々のサービスの向上を図りたいと思っております。