健康診断の目的と結果の利用法
1.
健康診断の目的は病気の発見が第一ではありません
一般に事業所が主体となって実施される健康診断の根拠となる法律は労働安全衛生法です。法律の枠内での検査項目は最低限のものに抑えられており、一昔前までは胸部レントゲン検査、尿検査、血圧測定と診察のみでした。結果は事業所の産業医や衛生管理者が管理して、必要があれば本人を指導したり、ときには職場の配置をかえるなどする判断材料に使われたりします(たとえば血圧が高いので深夜労働から昼間の仕事に配置転換するなど)。年齢に応じて検査項目を追加変更して、高齢になるほど項目数が増えるのが一般的です。病気の早期発見が健康診断の目的とされたことがありますが、現在では健康診断の大きな目的は自身の健康状態を知ると同時に、より良い状態に高める健康維持増進という考え方が主流になっています。

 

 

2.
健康診断ですべてがわかる訳ではありません。
健康診断を受けたからといってその結果に過大な期待をすることはできません。すぐにでもがんの発見ができると思っている人もあるようですが、これは無理なことです。がんを発見することを主要な目的にする検査(胃部バリウム検査、婦人科子宮頚ガン検査など)でも完全ではなく、がんを100%発見できるというわけにはいきません。もちろん健康診断で病気の発見やそのきっかけをつかむことはできますが、すべてを期待するには無理があります。

 

 

3.
健康診断結果の利用について
健康診断結果を手にしたとき、何も悪い所見が認められなかったからといって安心していませんか。
なかには結果をそのままごみ箱行きにしてしまうという人もあるようです。何もなかったから安心して良いというものでもありません。たとえすべて問題がなかったとしても、以前の結果とくらべてみてください。徐々に血圧が上がってきていることはありませんか? 中性脂肪値や血糖値が上限に近づいていませんか?目安として、毎年受診している健康診断のデータを3年分並べて、同じ方向に(悪い方向に)連続的に動いていないかを確認して下さい。数字が基準値を満たしていたとしても、3回分の数字が悪い方向に向かっていた場合、生活上の注意が必要になることがあります。

 

 

4.
再検査について
健康診断後の医師の指導などにはできる限り従っていただきたいと思います。再検査を指示されている問題が些細なことであると自己判断して、再検査を受診しないケースが少なくはありません。自己判断は禁物です。健康診断は受けるのが目的ではなく、結果を元に現在の健康状態をより良い状態にする、あるいは改善することが大きな目的です。受けっぱなしで内容を把握していないのであれば、どんなに費用をかけて多くの項目を受診したところで、せっかくの検査が無意味なものになってしまいます。